仮初めと失われた選択

 いつものように事故に遭ったネアを追い、そのあわいに飛び込んだはずだった。
 無事捕まえることが出来たので、今回は危険な目に遭わせず済んだかと安堵したその時に、選択を司る王の前に不思議な選択肢が示されたのだ。

 いわく『あなたが女性ならば通れない扉』と。
 他の道を探そうにも、今回落とされたあわいは数々の選択肢を選び取り、選ばれなかった選択肢を切り捨てて進むものだったのだ。
 今まで被害の少ない選択肢を選んでいたし、実際選択を司っているのだから、危険はないはずだったのだ。
 無論これも危険はない選択肢だ。戻れないというだけで。

「………困りましたね。これでは戻れないではありませんか」
「………お前が女性だったとはな」
「失礼な!私はしゅくじょなのですよ?」
「……レインカルのか?」
「なんという失礼な使い魔なのだ!踏み滅ぼしますよ!!」

 がすがすと床を踏み鳴らす姿に、まあ女性ではあるのだが、と思案する。
 擬態を取るとして、男性になったネアを考えると、何故だか困惑した。女性ではないと思ったことがなかったからなのか、不思議にその先が考えられないのだった。

「お前が男に擬態すれば通れる可能性はあるが……どうなんだ?」
「ふむ。それならば以前そのような擬態をして頂いた事はあるのですよ?」

 話を聴けば、ウィリアムやダリルと共にスリフェアへ入った際に男性の擬態を施されたという事だった。不用意に危険な場所へ行くものではないと注意すれば、書架妖精の道を歩き、思考すら変化させていたと言う。
 なるほどそれならば、このあわいでも使えるのではないか。

「とはいえ、この場所で思考まで変化させるとなると……」
「ですが、私は夕食を逃すつもりはないのですよ?」
「お前な……食い気ばかりだろうが」
「ですが危険のない所なので、これはもう今すぐにでも戻るしかないのでは…」

 緊張感も危機感もなく、ただ夕食のためだけに帰ると主張するのだ。であれば、危険のない範囲での思考の変化もさせておくべきなのかも知れない。アルテアが仕方なくその選択を手にし、ネアに擬態を施す。
 髪色や瞳の色はスリフェアで使われたものと同じ銀髪の青年にしておき、思考にも仮面を被せて更に影響を受けないように擬態させる。口調や思考を変える以前に、蓋をきっちりと閉めた箱のような結界の中にネアの精神を入れておき、箱に精神があるかのように動かすのだ。ネアは眠っているような状態になるが、無事連れ戻すまでに危ない橋は渡らない方が良いと考えた。
 なので、今ここに立っているのは、ネアの身体が擬態した青年で、中身は眠ったネアが仮面をかけられている状態なのだった。

「よし、通るぞ」
「はい………アルテア」

 躊躇うように名を呼ばれ、そうだ今は仮初めである、と意識を新たにする。ここにいるのは普段同様に損なわれやすい人間で、アルテアの選んだ唯一ではあるが、擬態で男の身体にし、その上で持ち上げている。
 違和感を拭えないが、確かにあの唯一ではあるのだ。であれば、これもまた取り分なのだろう、と一つため息を吐く。
 かちゃりと開いたその扉を通り過ぎ、次の扉の選択肢も、さらに次の選択肢も、特筆するべき事も、危険もなかったのだ。

 それなのに。

「媚薬と酩酊の部屋とあります……」
「よりによってそれか……」

 頭を抱えるのも仕方ない事だった。
 アルテアが酩酊すればネアの心身の安全は保証されず、ネアが酩酊してもアルテアが無事では済まないだろう。
 けれどどちらかを選べ、というのなら。

「私は空腹になるだけで済むのです」
「…………そうか」
「守護がありますので、攻撃は受けても生き延びられるでしょう」
「……………そうか」

 媚薬と酩酊であれば、アルテアが飲むのは媚薬の方になるかとも思ったが、ネアの体質なのか、彼女は空腹になる方面に振り切っている。ならば媚薬を飲ませるのはネアになるのだろう。

 けれど。
 けれど、酩酊で選択肢を誤ったら。
 魔術を紡ぐ指先が少しでも逸れたのなら。
 切り落とされるものは一体何か。通れないとされた女性ではないのか。
 であるならば。

「仮初め」

 短く名を呼べば、目を見開いてこちらを向く。
 偽名でもあるし、良い加減自分に名を呼ばれる事に慣れても良いだろう、とは思ったが、言うのは後でも良いだろう。

「俺が媚薬を飲む。お前は……そうだな、取敢えず手の自由を奪っておくか」
「あなたを……倒さないようにですか」
「そうだ。お前は何をするかわからんからな」
「むむぅ……」

 眉を顰めるのに構わず、歩を進める。置いてあるテーブルには2本の瓶。幸いにもラベルは貼ってある。ここで偽りのラベルを貼る可能性も考えるが、それでは正しく酩酊と媚薬とはならないだろうから、そちらは考えずとも良いだろう。
 酩酊を齎す液体を飲むのに差し支えない程度に仮初めの手首を縛ってやり、そしてアルテアは媚薬を飲み干した。

 内臓を焼くような熱と、くらりと眩むような頭。込み上げる欲情は削ぎ落とす選択にかけるが、後から後から湧いてくる。
 けれど、仮初めを損なう訳にはいかず、更にこの欲望の捌け口になどする訳にはいかなかった。
 だから耐えた。そして仮初めを持ち上げたまま、次の扉へと進んだのだ。

「……………なんだこれは」
「じょうこうしないとでられないへや……」
「読むな」

 ぺちんと額を叩くと、いつもよりは控え目に唸るが、流石に情緒が足りなすぎるのではないだろうか。
 ここでそんな事をすればどうなるか。シルハーンは勿論の事、ウィリアムもノアベルトも、ヒルドも果てはダリルやほこりまで出て来そうではないか。

 けれど出ないという選択肢も使えないのだ。
 このあわいから出ない限り、この媚薬を飲んだ状態で仮初めと二人だけなのだ。

「アルテアさんがじょせいになればすむのでは………」
「ないな。女は通れない。つまりこの場には存在できない。そう選択して進んできたからな」
「むぐふ。つまり……だんせいどうしで……」
「いいか、それ以上喋るんじゃない」
「苛々しています……」

 どの選択肢で間違えたのか、とふと意味のない事を考える。選ばれなかった選択肢は、断ち落とされて存在すらしないというのに。どうにかならないかと周囲を見回しても、そこにあるのはクッションをいくつも重ねて置いてあるゆったりした寝台と、ヴェルプステのようなものが両脇に飾られた開かない扉、そして入ってきた扉は消え去って壁になっていた。

「くそ…………」
「とりあえず下ろしていただきたい」
「降りてどうする。襲われたいのか」
「その場合は返り討ちです!」
「ったく……大人しくしていろよ?」

 そう会話をして、抱えていた仮初めを下ろしてやった瞬間だった。
 ばすん、と体当たりをされ、普段であれば身じろぎすらしない程度であったそれは、仮初めが男の身体に擬態していたこと、そしてアルテアに媚薬が効いていたからか、或いは守護を与え過ぎたせいか。

「おい……っ!?」

 揺らいだ身体を引き寄せたのは、赤い縄。
 それもボラボラ製のものであろう艶やかなそれは、選択の王の力を持ってしても切れないという頑丈さを誇るものだった。
 傾いた身体を立て直す間も与えられず、上半身をきりきりと縛り上げられる。そして困った事に色々と微妙な場所に当たっているのだ。更にいつの間にか解かれている仮初めの手首。いつの間に、と凝視すれば、結び目を引っ張ったら解けました、と言い放つのだ。
 呆然としているアルテアを余所に、仮初めと名付けられた人間は、普段の表情そっくりな顔でこう言った。

「早くしないと夕食になってしまうのです。さ、どうぞ」

 どうぞではないのだ。どうしろと言うのだ。いやこれは誘われているのか。違うあいつに限ってそんな情緒などないし本人も夕食の事しか気にしていないだろうに。
 瞬時にそう考えるが、縛られたままベッドに引き倒され、腹の上に座られてしまうと、確かに媚薬は効いているようで、身体の熱が上がっているのだった。

「おい……腹の上はやめろと言ったはずだが?」
「弾んではいませんよ。……それに……ああ、この擬態の記憶でしょうか、わかるのです」
「…………は?」
「はっきり言うとですね、男性時のじょうこうの知識があるのです」

 頭の中が真っ白になった。そして誰の仮面だったかとアルテアは記憶を掘り返すがしかし、媚薬の効果か記憶が上手く掘り返せない。そして腹の上の仮初めはといえば、自由を取り戻した両手でアルテアのシャツを引っ張っている。

「むう、にゃわのせいで上手くぬがせられないのです」
「やめろと言わなかったか?いいか、今日の夕食と同じものなら作ってやる、だから……」
「それは出られないと言う事ではありませんか?」

 確かにその通りなのだ。進むためには、条件を満たす必要があり、そして仮初めはその手段を取ろうとしている。問題は知識があるとして、どちらを選択するのか、なのだ。仮初めと自分が情交するとしたら……
 そこまで考えたところで縄を引かれ、顔を顰める。悦い所に当たっている縄が引っ張られ、擦れるのだ。
 ひゅ、と息を詰めたところで腹を撫でられ、身体を竦めると、腹から降りた仮初めは、更に淡々と服を脱がせる作業を続けている。

「少しの間、我慢できますか?それともちびふわに……はできないのでしたね」
「……っや、めろ……!?」

 とうとうずるりと下の服を剥がれ、アルテアは驚愕に固まってしまった。まさか男の服を剥ぐとは思ってもおらず、そもそもリーエンベルクの大浴場では、男の裸から逃げ回るほどだったはずなのだ。
 それとも仮面の人格が混ざってこのようになったのか、と困惑するが、仮初めの身体が男のものである、と改めて眼前に示されてしまい、混乱は頂点を極めた。

 固まってしまったアルテアの脚を抱え上げ、仮初めは記憶にある手順を確認した。
 潤滑剤を使って解し、繋がるだけなのだ。何しろ相手は魔物、汚れも何もないのだから、さしたる問題は見あたらない。
 潤滑剤はといえば、首輪の金庫の中に肌に優しいクリームがあったはずなので、それで代用する。
 記憶の中の自分の手より、幾分か大きな手にたっぷりとそれを取り、アルテアの身体の奥に塗りつける。
 冷たさに驚いたのか、呆然とこちらを見ているが、驚いた時のちびふわの表情のままであったので、仮初めは不憫に思って腹を撫でてやる。けれどちびふわには我慢してもらうしかないのだ。何しろリーエンベルクの美味しい夕食が待っているのだから。これを逃すなど考えるだに恐ろしいではないか。ディノを始めとした家族だって待っているだろう。それゆえに作業としてアルテアの身体を開き、じょうこうなどさっさと済ませてしまわなくてはならないのだ。

「……む?じょこ……じょー……まあ良いでしょう。さっさと済ませて帰るのです。ではちびふわ、少し耐えるのですよ?」
「やめ……っ」

 やめさせようと踠くが、蹴り飛ばすには仮初めは脆過ぎ、ボラボラ製の縄は千切れなかった。そして。

「────っ!」
「暴れてはいけません。ちびふわが傷ついてしまうではありませんか」

 身体を繋げられ、相手が唯一であるが故か受け入れる熱は甘く、もっと奥まで、もっと深くまで、と柄にもなく思ってしまう。声にならない悲鳴を上げれば、苦しいと思っているのか腹を撫でられ、胎の奥まで掻き回されて目の眩むような快感が溢れてしまう。
 稚拙な動きがもどかしく、自分から脚を開いてしまい、結果更に深くまで受け入れる羽目になる。腹腔に満ちて暴れる雄は仮初めであって仮初めのものではない、と理解はしているはずが、気の狂いそうな快楽が湧き上がる。この行為に慣れた身体は、仮初めをもっとと欲しがり、胎内の雄に吸い付いている。
 気付けば精を吐き出すより先に身体を仰け反らせ、息を詰めて快楽の頂点に立たされていた。

 はくはくと小刻みに息をし、受け止めるには重過ぎた快楽を逃していると、少し息の上がった仮初めが身体を離した。
そしてたらり、と敷布に白い粘液がこぼれ落ちる。
端なくもそれを勿体無いと思ってしまい、媚薬の効果にうんざりした。

「とびら……開いて、いません……」
「なん……だと………」

 呆然と扉を見遣れば、確かに開いていない。情交はしたではないか。
 そしてふと気付く。情交ならば胎に精を受け入れるまでではないのか、と。あの気の狂いそうな快楽をもう一度味わうという事だと。
 これ以上続けるのは危険だ、と頭に警鐘が響く。響くがしかし。

「……もう、いちど……という事でしょうか」

 目のすわった仮初めがアルテアを見る。欲情の残り火も感慨もない目で。目的のためにアルテアの矜持すら切り捨てる気なのだろう、けれどその身体に欲情の兆しはなく、無理に繋がろうにも硬さが足りず押し進められないのだ。

「………情交というのなら、種付けまでしろという事だろうさ」

 溜息を吐いたアルテアは、縛られた身体をものともせず半身を起こす。
 もう一度あの快楽を受け入れたなら、自分は変わらずにいる選択を取れるのか、と目を眇めるが、仮初めはそこまで考えてもいなかった、という表情で頷いている。
 先の情交の際は確かに兆していた雄の欲情はどこへ行ったものか、そしてそれならば自分がどうにかするしかないのだろう、と諦観を浮かべて座り直した。

「それで?記憶に手順をがあるのなら、その状態でどうするのかは解っているんだろうな?」

 改めて聞けば、困った顔をされてしまい、知っているのかどうかの答えを寄越さないのだ。
 まさかとは思うが記憶に抜けがあるのか、それともやはり中身がネアであるからには擬態といえど男の身体に触れるのは嫌なのか。そう考えて恐らくは後者であろうと見当をつける。

「…………ったく。そこに寝ていろ。目を開くなよ?」

 諦観に僅かな期待と、一雫の怯懦を交え、横になった仮初めの身体に近寄る。
 身体を屈め、くたりとした雄にそっと唇で触れる。ぴく、と手が反応するが構わず舌を絡め、口腔へ導く。
 ほわ、と気の抜けた声は上がるが、酩酊故か今の所は攻撃はしてこない。アルテアが縛られている事も少しは考えているのかもしれないが、今は一時も早くこの状態を脱するべきだ、と思考を切り替え、口内の雄に奉仕をする。
 べっとりと舐め上げ、裏側に舌を這わせ、喉奥で扱く。契約の繋がりから来るものか、唯一と定めた相手だからなのか、甘美な感覚に前後を忘れて続けそうになるが、先端を吸えば呆気なく勃ち上がったそれに口付け、準備が出来たと安堵する。

「ふぐ。温かくてぬるぬるなのでふ……こ、この感覚は……」
「記憶にあるんだろうが。もう少し我慢しろ」

 それなりの大きさのそれを跨ぐように乗り上げ、腰を降ろす。入り口に当たってつるりと滑るが、再度押し当て、ぐ、と押し込むようにすれば、アルテアの身体は慣れもあってか抵抗を見せず呑み込んだ。媚薬はまだ切れておらず、挿入だけで思考を捥ぎ取られそうな快楽が押し寄せる。ゆっくり、と思う頭とは裏腹に、身体は性急に欲して、脚だけで身体を支えながら、何度も腰を振り、挿入された雄を貪る。胎内の肉で舐め回す。吸い付いて搾り取る。ぐちぐちと音を立て、奥まで届くように、悦い所に当たるようにと動けば、呼気の荒さに気付いたものか、仮初めが声を上げた。

「とても奇妙な感覚なのです……空腹なのに満腹なような、そしてちょっと痛いのでふ」
「よし、黙れ。…………まだ痛むか?」
「奇妙なままではありますが………痛みは少なく……」

 逸る身体をどうにか抑え、締め付けを緩めれば仮初めの眉間の皺は少なくなったが、男としての身体の感覚を受け取りかねているのだろう、困惑の表情はそのままだった。
 その表情から考えるだに、現在のアルテア自身の状況は見せたいものではない。赤い縄に戒められたまま肉欲に溺れ、雄を咥え込んで浅ましく腰を振り、もっと奥へと受け入れたいのを我慢しているのだ。

「……くそ……」

 神経が焼き切れそうな程の快楽が胎の中から湧き出てくる。腰を揺らすだけで悦い所が新たに出来てしまうような感覚に襲われ、どこを擦ってもそれだけで果てそうになる愉悦が湧いてくる。息が上がり、腰が無意識のうちに揺れてしまう。内臓を掻き回されて息が詰まるが、それよりも肉欲が勝り、根本まで飲み込みたいと欲してしまう。ナカだけで悦くなっているせいか、アルテアの雄は項垂れて雫を滴らせている。脚が震え、崩れ落ちそうになる身体に堪えろ、と自制しようとした瞬間。

「大丈夫ですか、アルテア……その、息が荒いのですが……」

 余計な世話と言いたい所であったが、仮初めの手はアルテアの腹を撫でる。

「────────っ」

 声はもはや上げられず、仰け反って絶頂の波濤に飲み込まれる。翻弄されて息も出来ない。
 ゆるゆると腹を撫でる手は止まらず、ナカと外から絶頂の極限を引き上げられ、突き刺される。快楽に喰われ、砕かれ、一瞬で意識がぶれた。

 だめだ、これは繰り返したら駄目になる。
 意識の隅が囁く。そうだ、繰り返しているはいけない。情交を終えたら、ネアを連れてリーエンベルクへ戻るのだ、と。
 喘鳴を漏らしながらも仮初めの雄を搾り上げ、喰い締め、吐精させようと力を振り絞る。
 間断なく受け取る悦楽に眩み、仮初めの首筋に噛みつきたいという激しい欲求が湧く。けれど。けれどもう少し。

「あるてあさ………」

 切れ切れに聞こえた声に、そして胎内に広がる熱に、崩壊するかのような感覚が広がる。熱い、そして甘い、極上の美味さを身体の内側から味わい、びくびくと痙攣の治らない身体が、それでも鍵の開いた金属音を聞き取った。

 暫くの時間を経て、陶然としていたアルテアが我にかえると、仮初めもまた疲れてしまっていたのか、転寝をしていた。
 扉を見れば無事開いており、幸いにも外に出られる気配がある。
 魔術で服を整え、眠る仮初めの鼻に噛み付いて起こせば、普段と変わらないレインカルのような唸り声で怒り出した。

「おい、夕食を逃したくないのなら、この縄をどうにかしろ」
「むぐる!鼻に噛みつきましたね?………は!夕食です!」
「結局お前は食い気なのか………」
「今回は危険などなかったではありませんか。であれば、ちょっとした冒険……ぼうけんだったのでは」
「戻ったら擬態も記憶も戻すからな?」
「はい、そうして下さい。なんというか……アルテアさんに食いつきたくなる感覚だったのですよ」

 仮初めが慌てて取り出した終焉のナイフで縄を切らせ、どうやら無事終わる選択肢を手に取れたようだとアルテアは転移を踏むが、安堵するのとは裏腹に胎内の熱は治まっておらず、戻ったなら誰に相手をさせようか、と考えを巡らせたのだった。

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